幸福論
どこかで感じた懐かしい気持ち。
懐かしい香りに懐かしい心地よさ。


思い出すのを半年間ずっと避けてきた。
今日だって、思い出さないために
わざわざ違う場所に来た。


それなのに、ここに来ただけで
全て鮮明に蘇る。


大好きだった匂いに大好きだった心地よさ。


これ以上ここにいたら
この半年間が台無しになる。




夕焼けを眺めていた自分に言い聞かせ
今にもこぼれそうな涙を必死にこらえて
無理やり視線を落とした。


思い出しちゃいけない。
あれは幻だったんだ。


私は仕事が大切で、彼氏なんていらなくて。








静哉がもうすぐ戻ってくる。


時間を見ようと携帯を出した。





「...........ッ、なんでよ.........」






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