幸福論
湖に向けた目を伏せた。


とりあえずみんなに謝らなあかんな。


そう思って背を向けた。






時間が止まったって
こういうことを言うんやな。


瞬きも忘れるんや。


振り返った先には何を隠そう
彼女がおったんや。


会いたくて会いたくて
会える日をずっと夢見て


必死に禁煙までして
もうそれは破ってしまったけど


どこまでも綺麗で


何よりずっとずっっっと待ち続けた彼女が
そこにはおった。






「......遅いってぇ」






情けない声を出して
俺はその場にしゃがみこんだ。






「.....紺さん.......?
遅くなってすいません、あの......」

「ううん、ええねん。
来てくれてありがとう......」





すぐに立ち上がり
彼女に目線を戻す。


手に持っていたタバコの存在を思い出し
携帯灰皿に雑に押し付けた。


ぎこちない空気が俺らを襲う。


なんで来てくれたんや。
ムービー見てないはずやのに。



そんなことより今はこの状況を
どうにかしなあかん。
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