幸福論
母親は泣いて私に頼んだんだ。
生きてほしいって。


お母さんが一生守る。
お願い生きて。


そんな必死な母の願いに
首を振ることなんて出来なかった。


そして中学3年の冬。


高校受験を控える時期に
私は両胸を失った。


手術後の記憶なんてない。


ただ、
ただ両親と弟がそばで泣いてた。


それからの私はまるで人形。


”高校は東京に行きたい!”
そう意気込んで提出した進路希望は白紙に。


行けたらどこでもいい。
幸い内申が良かったためにすぐ決まり


母親が選んだ女子校に通った。


夏になれば必ずある水泳の授業。


毎年見学した。


”私ぺちゃんこなの〜”
”え〜大きすぎるのも嫌じゃない〜?”


クラスメイトの話は
私とは次元が違う話。


小さくて悩むなんて
贅沢すぎるんだ。


他校の子に恋をした。
今度大学生と合コンする。


そんなの私には一生ない話。
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