幸福論
「あ、名刺........」





ちゃう、俺が聞きたいのは
ビジネス用のメールじゃないねん。


そんな俺の想いも虚しく
新藤さんはテーブルを片付け始めた。


その間、彼女と目が合うことは無かった。



ただ手強いだけなのか。
それともバリアが硬いのか。
彼氏がおるから教えたくないのか。


急に連絡先を聞いた、
さっきまでの自分が恥ずかしくなって
俺は思わず自分の携帯に目を落とした。






「小森さんはお迎え来られるのですか?」

「あ、はい。メンバーが来てくれると思います。」

「じゃあ到着されるまでここにいましょうか。」






仲がいいんですね、なんて微笑む彼女。
ちゃんと俺らのことを知ってくれてるんやって
嬉しかった。






なるほど。
俺がアイドルやから遠慮してくれたんや。
普通はアイドルと連絡先なんて交換せんもんな。


これは仕事や。
妙に納得した俺は
誰かしらが迎えに来るのを待った。
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