魔王と勇者の望まれぬ結末
真っ白な生地にチラホラと赤い薔薇の花の刺繍を施し、襟元のフリルがあしらわれたシャツに黒の絹のズボン。
私はほとんどと言うくらいにこの組み合わせを着ていた。洗濯が終わればいつも誰よりも先にたたみに行き次の日には着る。
それくらいに私はこの服が”お気に入り”だった。
ミーラは毎日アーリの手伝いをしたり、ラルトと2人で街に買い物に行ったりとわりと忙しく生活を送っていた。そうしてようやく人間界の生活に慣れ始めたと感じてきた。

ある朝、アーランド夫妻がミーラとラルトの2人を応接間に呼び出した。

「母さん急に何?今から夜の食材を取りに行こうと思ってたのに。」
「ラルトとミーラにお願いがあるのよ。」
「ん?お願いってなんだよ?」
「父さん達は今日から3日間王都に行くことになった。3日後は大切な日だからな。」
「あーもうそんな時期か…」

ミーラにとってはようやく普通に生活が出来るようになっただけで、まだアーランド家のしきたりやいつ何があるのかすら把握出来ない為、三人が何に納得しているのかすら話の先が見えないのだ。
そんなミーラを置いて話は進む。

「だから、ミーラとラルトは留守番をしていて欲しいのよ。ミーラちゃんを連れて王都に行けないしね」
「え?」

ミーラは、キョトンとした。
何故ならアーリがミーラの方を見て微笑んだからだ。当のアーリにとっては、いつもの微笑みだが、話の内容をいまいち理解出来ていないミーラは、深く考えてしまった。

(お風呂の時や着替えの時でも肌は見せないようにしてたはずっ!バレてないはずなのにっ?!)

ミーラの額には冷や汗がかきはじめるくらい、一瞬で頭が嫌な方向に巡り出す。
しかし、アーリは気にせずに続けた。

「せっかくミーラちゃんが私達に慣れてきてくれたのに、他の知らない人達が多い場所には連れて行けないからね。」
「そうだ、だからラルトはミーラちゃんと家を守っていてもらおうと母さんと決めたんだ。大丈夫、3日後すぐに帰ってくるからな」
「はぁ、分かったよ父さん母さん。ミーラと家は、僕に任せてくれ。ね?ミーラ」
「え?あ、うん。任せてく、ださい。」

バレてないという安心感と急にラルトに返事を求めらた驚きで焦ったミーラの返事はしどろもどろになってしまった。
そして翌日、アーランド夫妻は荷馬車にある程度の荷物を乗せ王都に向かった。
この日から私とラルトは、3日間を2人きりで過ごす事となる。
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