恋は小説よりも奇なり

後悔という自らの世界に入り込んでしまった珠子を現実の世界に引き戻すかのように、満は「あのー……」と控えめに声をかけた。

「私はこの本をいただいて帰るべきではなかったのでしょうか?」

「そうよ!一見すれば誕生日プレゼントのお礼のようだけれど、実際はあなたと先生が出会った事実さえもチャラにされちゃうような、それはそれは恐ろしい意味を持つ本なのよ」

「はぁ、なるほど……」

満は抱えている本に目を向けながらぼんやりとつぶやく。

冷静に事態を把握しているようだが、あまりの衝撃事実に取り乱すことも忘れているだけだった。

この本にそんな意味があっただなんて知らなかった。

気まぐれでプレゼントを受け取ってもらい、サインをもらっていい気になっていたのかもしれない。
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