恋は小説よりも奇なり
Episode.4 デートと雨宿り
武長 奏の原稿回収に向かった日から、満は珠子のそばで社員にも劣らないやる気で仕事に励んだ。
仕事のことだけを考えていたかった。
それ以外のことを考えるスペースを頭の中に与えたくなかった。
少しでも油断していると、たった一つのことであっという間に思考が埋め尽くされてしまう。
お蔭で高津書房での短期アルバイトでは多くのことを学び、編集部の方々とも仲良くしてもらい、満にとって大きな収穫となった。
夢のようだった編集者生活もすぐに終わり時が来て、気付けばクリスマスも正月も過ぎ去っていた。
「そんな話、初耳だよ!?」
満の親友 小林 樹は図書館の貸し出しカウンターから身を乗り出して抗議している。
冬休み中、アルバイトとして編集業に携わっていたことを満は樹に伝えていなかった。