恋は小説よりも奇なり
「お正月とか成人式とかで樹のバイトも忙しそうだったし」
満は苦笑する。
電話をしてもメールをしても樹がなかなか捕まらなかったのは事実だった。
「それはそうだけど……」
尤(もっと)もなことを言われ、樹の表情がどんどんむくれたものになる。
自分が原因だと分かっていながら納得いかない時の顔。
「でもさー、武長さんちょっと酷くない?満が武長さんの大ファンだって知ってて手切れ本渡すなんて……」
「まぁ、いろいろとストレートな人なんだよ……」
「そんな本、突っ返してやればよかったのに。アタシだったらそうする」
樹は不満タラタラで満に視線を送る。
自分のために怒ってくれている親友を見て、満は不謹慎にも嬉しいと感じてしまった。