恋は小説よりも奇なり
こんな親友が傍にいてくれる幸せに、チクチクと疼いていた心の痛みも少し和らぐ。
「ありがとう、樹。でも、これは私が受け止めないとダメなんだと思う。
たとえ本を返して“縁切りなんて認めない!”って駄々をこねても何も変わらないんだよ。何も――…」
相手よりも自分の気持ち優先で子供っぽいことばかりしてきた自分を戒(いまし)めるように満は静かに振り返った。
「武長さんにとって満はちょっと特別みたいだから協力してほしいって大和さんに言われたから電話番号教えたんだよ?こんなことになるって分かってたらアタシだってさ……」
樹の背が丸まり小さくなる。
良かれと思ってやったことで親友に悲しい思いをさせてしまったと彼女なりに責任を感じていたのだ。