恋は小説よりも奇なり

「気にしすぎだよ。それに――…」

満は言葉の途中で思わず口を閉ざしてしまった。



それに――…武長 奏には見えない大きな壁がある気がする……



口にしようとしていたことを必死に飲み込んだ。

自分が彼のことを人にとやかく言うのは間違っている。

「それに何?」

樹が問うと「いや、えっと……何でもない」と満は返事をした。

多少、挙動不審に思われても今思った胸の内をさらすわけにはいかなかった。

「そう?何でもないならいいけど」

樹は深く干渉することなくあっさり引く。

満は心の中でホッと胸をなでおろした。

「ねぇ、満。気晴らしにパアッと遊びに行こうよ。忙しい年末年始も無事に乗り越えたことだしさ」

「いいけど、どこへ?」

満は樹と会話をしながら返却済みの本をパラパラと確認していく。
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