恋は小説よりも奇なり

『そういえば、満ちゃんから電話とかありました?』

「いや、特にないが……それがどうかしたのか?」

『少し前に“先生にお礼を言いたいので連絡先を教えて下さい”って言われたので。何かあったのかなぁって……』

ヒヒヒっと野次馬根性むき出しで笑う珠子。

人の恋愛にやたら首を突っ込みたがる学生時代の女子たちを思い出させる。

「無い。あったとしてもお前に教える義理はない」

『先生ひどーい。私は先生のことを心から心配しているだけなのにー』

珠子の猫なで声に奏の全身が下から上へと身震いする。

いつもであれば“大きなお世話”と切り捨てるところを、奏は「なぁ……」と言葉をすくった。

『何でしょう?』

話を聞く体制でいる珠子。

奏は彼女に質問をするまでにほんの一息分の間をとった。
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