恋は小説よりも奇なり

「……俺は女泣かせか」

鬼の武長が女の子の涙を気にしている。

投げられた問いが意外すぎてさすがの珠子もすぐには答えられないでいた。

『誰かに言われたんですか?』

「そういうことではないんだが……。いいから人の質問に答えなさい」

返答を焦らされて奏はだんだんと恥ずかしい気分になってくる。

急かすことで湧き上がる羞恥心をなんとか堪えようとしていた。

『先生って男女関係なくズゲズゲもの言うし、おまけにあまり笑わないものだから威圧感たっぷりだし。
か弱い女の子だったら思わずポロッと流したくなるかもしれませんよね、真珠みたいな涙を……』

奏は黙ってそれを聞いていた。

無言のイライラだと勘違いしてしまった珠子は、彼の地雷を踏んでしまう前に『でも……』と続ける。
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