恋は小説よりも奇なり
Episode.6 過去と涙
色とりどりの植物が花を咲かせ、穏やかな気候。
満は大学四年生になった。
就職活動に卒業論文と慌しく時間が過ぎていく。
珠子から奏の連絡先を聞いたにも関わらず、勇気と時間の無さが重なって連絡できていなかった。
一度タイミングを逃すとそれを取り戻すのは至難の業。
教えてもらった番号へ何度連絡をしようとしたか知れない。
そのたびに満の心は不安で押し潰されそうになった。
本日、何十回目ともなる深いため息が口から出る。
満は論文の資料を探すために市立図書館へと続く坂道を上がっていた。
この場所で初めて彼と出会った。
武長 奏だとは露知らず、ただ偶然の時に身を任せた。
奏はあの出会いを神様の嫌がらせだと言ったが、今の満は彼との出会いを神様に感謝したい。