恋は小説よりも奇なり

「まぁ、酒臭さは泥酔すれば当然ついてくる現象だとしても……体重はなんとかならないものか。お前を負ぶって腰が砕けるかと思った」

奏はこれ見よがしに自らの腰をさすってみせる。

今の満には言い返す言葉もなかった。

「冗談だ。顔を上げなさい」

奏の手が満の両肩に触れる。

彼に促されて満は頭を上げた。

整った顔が目の前にあり満の身体の体温は急上昇していく。

「……何度も、何度も電話をしようと思ったんです。早見さんに電話番号聞いて……。お礼もお詫びもしなきゃって。
でも出来なくて。絢子さんが居たら不快な思いをさせちゃうといけないし……」

満は固く目を閉じた。

奏の顔がまともに見られない。

「あー……それで早見がお前から連絡あったか、と頻りに聞いてきたのか。それより、何でお前が絢ちゃんの名前を知っている。会ったのか?」

奏は満の肩から手を離した。

解決されていく問題と新たに湧き上がる疑問。

顎に手を添えて自分でも答えを模索しつつ満に問いかけた。
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