恋は小説よりも奇なり
「えっ、えぇ……まぁ」
満はほろ苦い笑みを浮かべて頷く。
大学前で待ち伏せされたなんて言えない。
「絢ちゃんがお前みたいなちんちくりんに興味を示すなど珍しいこともあるものだ……」
奏の疑問は一つ解決されればまた一つ生まれる。
ちんちくりん呼ばわりされた満は奥歯をギリギリ言わせて堪えている。
先ほどの緊張と胸の高鳴りが嘘のようにきれいサッパリ消え去っていた。
武長 奏には近寄るなと釘を刺されたと正直に言ってやりたい。
しかし、満には言えなかった。
絢子が彼を大事に想っている事が分かっているから。
「絢子さんってどんな人なんですか?」
満の問いに奏は少し頭を捻(ひね)って試案した。
「そうだな……。基本的にしっかりしているが末っ子育ちだからか甘えん坊。昔から大和や俺に懐いていてかわいい娘(こ)だ」
絢子のことを語る奏は優しく誠実だった。