恋は小説よりも奇なり


「奏!遅かったじゃないか」

「少し寄るところができてな。それより、今回の主役に挨拶でもしてこようか」

「あっ、私も一緒に行きます」

花嫁の控室へ向かうという奏に満もついて行く。

並んで歩く二人の姿に大和は心から安堵していた。

奏の中に初めて十年という月日を感じた気がした。
止まっていた時間がゆっくりと動き始める。



奏はもう大丈夫だよ――…



彼が誰よりも認め、愛した女性(ひと)へ伝えるように大和は空を仰いだ。

綺麗な長い廊下を進んだ先にある花嫁の控室。

コンコンと満がノックをすると「はーい」といつもと変わらない珠子の声が返ってくる。

「早見さん、この度はご結婚おめでとうございます」

扉を開けて室内に入るなり満はお祝いの言葉を伝えた。
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