恋は小説よりも奇なり


珠子は小さくはにかみながら「ありがとう」と返す。

それから、満の後ろに立つ奏に気付いて言葉を続ける。

「そちらの方は何かないのかしら?」

打ち合わせ中に散々結婚の遅れについて皮肉を言われたお返しと言わんばかりだ。

その表情はまさにドヤ顔。

「……結婚、おめでとう」

蚊の鳴くような声で苦々しい顔をする奏。

珠子はふふふっと満足そうに微笑んだ。

綺麗にメイクをされた珠子の笑顔はいつにも増して輝いていた。

「早見さん、本当に綺麗です……」

近くに寄ると花嫁の魅力がより鮮明になる。

満は瞳をキラキラ輝かせて珠子のドレス姿をその目に焼き付けた。

いつか自分もこんな素敵なドレスを身に着けて大好きな人とバージンロードを歩きたい。

そう思わせてくれるには十分な姿だった。
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