恋は小説よりも奇なり
「満ちゃんもすぐに着られる日が来るわよ」
珠子はそう告げるともっとこっちへと言うように満に向かって手招きする。
「これからは、だ〜い好きな人とずっと傍にいられるんだから……ね」
耳元で小さく囁(ささや)かれた甘美な未来。
悪戯心いっぱいの珠子のウィンク。
ボッと燃えるように満の体温が上がる。
「跡取りも決まって、これで私も心置きなく隠居ができるってもんよ。あっ、そうだ!高津書房内定祝いも兼ねて今日のブーケは満ちゃんにプレゼントするわ」
ドレスを着飾ったお姫様も中身はやはり珠子だった。
ブーケを貰える喜びを伝えようとした満より先に奏が口を開く。
「何を寝ぼけたことを言っている。お前が隠居するのは内定しただけのミジンコを使えるミジンコ程度にしてからに決まっているだろう。今のまま引き渡されてもしもの事があったらどうする」