恋は小説よりも奇なり
「そんなこと知ったこっちゃねーですよ。大体、満ちゃんは今のままでも十分立派です。
先生がきっちり締め切り守って、家の電話線ブッチしなければもしもの事なんてありませんよ。私の満ちゃんにケチつけないでくれます?」
珠子はむんずっと椅子から立ち上がって満の身体をギューッと抱き寄せた。
淡いローズの香り。
鼻腔をくすぐるお姫様の香りに満の顔が思わず緩む。
「誰がお前のだ。このミジンコは俺が先に見つけたものだろ。返せ」
満と珠子を引っ剥がす奏。
距離を離されても珠子の手は満の腕をがっちりと掴んでいた。
「“返せ”って……満ちゃんを物みたいに扱わないで下さいよ」
珠子はグッと満の身体を引き戻そうとした。
「俺がどうしようと俺の勝手だ」
珠子が引くと奏も引き返す。
まるで子どものおもちゃの取り合い。