恋は小説よりも奇なり
どちらかといえば寡黙で難しそうなタイプの奏も、大和の前だと憎まれ口をたたきながらも楽しそうにしていた。
「お待たせ、満」
三人で立ち話をしていたところへ、買い物を済ませた樹が文芸フロアにやってきた。
「お帰り、樹」
親友を笑顔で迎える満。
樹は見覚えの無い男性たちの方が気になり「こちらは?」と満に尋ねた。
「えー……こちらは、昨日行った市立図書館で危うく大怪我をするところを助けてくれた武長 奏さん。そして、こちらのスーツを着た方が高津書房の専務取締役で高津大和さん」
満が紹介を終えると大和が一歩前に出る。
そして満の時と同様、樹にも名刺を差し出した。
「高津 大和です。どうぞよろしく」
大和の笑顔が光る。
それはもうダイヤモンドのような輝きで。
「小林 樹と言います」
樹は短く挨拶をすると両手で名刺を受け取った。
見た目は今時な感じだが、礼儀とかそういう部分はとてもしっかりしている。