恋は小説よりも奇なり
精一杯気を遣っているのが見て分かると、奏はその大きな手で彼女の頭をふわふわと撫でた。
「別にアレに言われたから送ろうと決めたわけじゃない。俺がそうした方がいいと自分で判断したことだ。まぁ、迷惑だと言うなら話は別だが?」
「迷惑じゃ……無い。ありがたいと思ってます」
「じゃぁ、素直に送られなさい」
奏の優しい命令口調。
「はい」と答える満の顔はほのかに紅潮して、風邪をひいているわけでもないのに少しだけ呼吸が苦しくなった。
「お、お会計済ませてきますね!」
満はその場から逃げ出すようにレジへ向かう。
店員が購入本の一つ一つにブックカバーを施している間、彼の方をチラリと振り返ってみる。
奏はおすすめ小説本を手にして最初の数ページを読んで、満が戻ってくるのを待っていた。