恋は小説よりも奇なり
Episode.2 愛とプレゼント


鬱陶しくてたまらなかった猛暑の時期も過て“肌寒さで目が覚める”という話をよく聞く季節になった。


『奏ちゃんの紡ぐ物語が好きよ。それに、その物語を作る奏ちゃんも大好きだからね』


夢の中で奏に笑いかけるのは白いワンピースを着た小柄な女性。


“懐かしい”などという言葉では言いつくせない……


奏が認めるただひとりの存在――…


月森 雪乃(つきもり ゆきの)は、奏が高校時代に彼と大和の家庭教師として通っていた大学生だった。

当時から人付き合いを苦手とし、たまに会話をすれば人の心を逆撫でするばかりの奏が、大和以外で初めて心を開いた他人だ。

奏は雪乃を愛していた。

雪乃も奏が好きだった。

しかし、彼女は奏を残して旅へ出た。

行き先は黄泉(よみ)の国。
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