恋は小説よりも奇なり
インターホンのチャイムは徐々にその間隔を狭め、珠子の苛立ちを表していた。
「うるさい。一度聞けば気付――…」
髪を乱暴に掻きながら扉を開けようとすると、何かが閊(つか)えたような鈍い音がした。
顔を出せば、そこには大きな段ボールとビジネスバッグを抱えた珠子が仁王立ちしている。
「荷物があるならそう言えばいいものを……」
「えーいっ!黙れ!来客を何分も外で放置するヤツがあるか!」
気の毒そうな奏の視線。
珠子の怒りが頂点に達す。
彼女は扉が完全に開くと同時に奏の部屋の中へ我がもの顔でドカドカ踏み込んでいった。
「あー、重い!ここまで持って来るの大変だったんですよ……」
珠子は荷物が詰まった段ボール箱をテーブルに下ろして一息ついた。