恋は小説よりも奇なり

図書館には上段にある書籍を取るための脚立が常備されている。

満はその脚立を持ってきて、グラグラと揺れない事をしっかりと確かめてから階段を上っていく。


やった――!


武長 奏の小説を手にした時、満は心の中で大歓声をあげた。

あまりに感動的で、脚立から降りるのも忘れて書籍を見つめている。

「高校生にもなって読書感想文なんて有り得ないよねぇ」

「そうそう、ウチら小学生じゃないし!って言ってやりたくなる」

感動に浸りきっていた満の心に割って入ってきたのは、女子高生の甲高い話し声。

“図書館なんだから静かにしろ”とガツンと言いたかった。

しかし、相手に面と向かって物申せるほどの度胸は満には備わっていない。

仕方なく、彼女たちが通り過ぎるのを脚立の上で待つことにした。
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