恋は小説よりも奇なり
男がイケメンだと認識した途端に掌を返したように笑顔になる。
満のことを睨みつけていた時とは随分な違いだ。
反省の色は無い。
「迷惑かけたお詫びとかしたいんで――…連絡先を教えて下さーい」
もうひとりは、用意周到にもポケットからスマホを取り出している。
イケメンとお近づきになりたいばかりの女子高生たち。
もはや、彼の整った容姿しか見えていない。
男の傍に寄ろうとした女子高生の足が脚立の脚に衝突した。
えっ!?嘘――…
満が乗っている脚立が地震の時のようにグラッと揺れる。
カタカタと音を立てる脚立の上で満は必死でバランスをとろうと奮闘した。
「危なっ――…!」
危険を逸早(いちはや)く察知した男が女子高生たちの間を割って手を伸ばす。