恋は小説よりも奇なり
「……うわっ!?ご、ご、ごめんなさい!」
男がモゾッと揺れ動くと同時に、満は彼の腹の上から飛び退いた。
男はやはり不機嫌だ。
それは、女子高生を注意した時のものとは比ではなかった。
「じゃあ、ウチらはこれで……」
「ホントにごめんなさい!」
一部始終を見ていた女子高生たちは引きつった表情で後ずさり、逃げるように立ち去っていった。
「あの……本当にすみませんでした。助けて下さってありがとうございます」
満は男が落とした本を拾い上げ、軽く埃をはたいて差し出した。
そして、横から見ると直角に見えるほどに深々と頭を下げる。
男はこれといった表情も無く、満の手から本を抜き取った。
絶対怒られる……!