大嫌いの裏側で恋をする
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『高瀬、お前これで4人目だぞ、もうちょっと何とかならんのか!!』
と、課長が睨む。
んなもん、知るかよ。
勝手に辞めたんだろ。
俺は。俺の仕事をこなしてただけだ。
ほんの半年前まで、ペアの事務が辞めるたび俺が思ってたことといえば決まってこうだった。
自分なりに仕事を突き詰めれば突き詰めるほど。
本来最も意思疎通できてないと面倒になる、事務方との関係を築けていなかった、と思う。
そんな時後任で異動してきた石川の印象は、生意気でうるさい女、だった。
怒鳴りつけても怯むどころか、非がないと思えば、たて突いてくる。
〝うるさいけど骨のある女かもな〟
なんて思ってるうちに吉川と仲良くなり、俺の愚痴なんかを楽しそうに喚いてて威勢も良く新鮮だった。
『お前わざと聞こえるように言ってんのかよ』
と、からかえば。
『当たり前ですよ、そんな感じでムカついてるんで直してくださいね!』
と、笑う。
そんなテンポの心地良い会話を、いつしか好ましく思うようになり。
営業先から会社に戻って憂鬱どころか、どこか気持ちが緩む。 そんな感じたことのない感情を覚えはじめたのが、この頃だ。
そうして1ヶ月程経った頃だったろうか。
順調に過ぎてたように思われたが、知らなかった現状を吉川のある一言で知ることになる。