大嫌いの裏側で恋をする


『だからって、泣きついたりしたくないですよね! 方法があるんなら自分で解決してやりたくって! 悔しいじゃないですか!!』
『……声でけぇよ』
『ああ、すいません。でも、だって田代さんの思うツボなんてムカつくんですもん、あの人絶対私がオロオロするの見て楽しんでるだけですよ!』

(どう助けてやろうって、思ってたけど)

なんだ、こいつ。

めちゃくちゃ面白くて、
めちゃくちゃ、カッコいい。

――ああ、ヤバい、これ、好きだ。

(こいつのこと、好きだわ)

ふざけんなよ、身体中が熱い。
急激に自覚した気持ちのせいだ。

勝手に気恥ずかしくなってるのを誤魔化したくて手を伸ばし、目の前の女の頭を撫でた。

(……クソ、失敗した)

少し触れた、柔らかな髪の感触。
そこから増してく想い。
次は、頰に。
その次は、首筋に。
腕に、腰に、全てに。

触れたくて、そんな欲が芽生えて。

こんな気持ちで女に触れたことなんて、なかったんじゃないだろうか。

触れたくて、だけど。

(男いる相手に何をどうしろってんだ、最高に面倒だろ)

躊躇う気持ち。
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