大嫌いの裏側で恋をする
好きだ
「お待たせ、しま、しました……!!」
少し丈の長いグレーのスカートをひらひらと揺らし、息を切らせ駆け寄ってきた石川美波。
俺と目が合うなり申し訳なさそうな顔見せ、頭を下げた。
自然と緩んだ口元と同時に車の窓をあけて「暑いから早く入れよ」と声をかける。
もう10月だってのに、昼間は普通に暑いから最近の世の中はマジで地獄だな。
駅近くだから人が多くて、余計に暑い。
「す、すみません、待たせてしまいました」
のそのそと隣に座った石川は薄手の白いニットの腕を捲ってシートベルトを締めながら、またペコリと頭を下げる。
いつもは見ないピアスが、キラリと陽に反射して光るのをなんとなく見ながら俺は返した。
「お前なぁ、仕事じゃねーんだから」
「え?」
不思議そうな目と、視線が絡む。
目が合うと、自然と手が動き。 それは当たり前のように石川の髪に触れて、撫でた。