大嫌いの裏側で恋をする
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震えるてた肩がゆっくりとペースを乱すことなく、呼吸とともに上下し出して。
(泣きやんだか)
ホッとした途端。
抱きしめながら目に入った首筋にキスをする。 小さな悲鳴をあげたと思えば「ほ、他にも人がいるじゃないですか……!」なんて、抗議の目を見せた。
(だから、お前のその顔可愛いんだっつーの)
「まわりも似たようなもんだろが」
「え? ひぃ!!」
「なんだ、その声」
「いつのまにかカップルまみれだった」
赤くなったり青くなったり、泣いてみたり。
飽きない顔を見ながら、立ち上がり手を差し出す。
いつのまにか夕焼けは、すっかり夜の色になって。
点々と寄り添うカップルは次に暗がりの中で夜景を楽しむんだろうか。
……俺はこの雰囲気の中、人目が恥ずかしいとか言うお前の拒否を受け入れてやれそうにもねーから。
「ほら、立てよ。 移動」
「え!? あ、はい、どこへ」
慌てた様子で手を伸ばした石川の、その手首をグイっと引き寄せ肩を抱きながら立たせる。
癪だから俺は僅かに笑みを作って、からかうような声を出してみる。
「何だよ、お前帰りたくねーの? 泊まる? 」
わざとらしく腕時計に目をやる。
と、言っても、まだ夜の7時にもなってない上に。 車だから別に何時になっても帰れるわけだけど。
「か、帰りますよ!? 帰ります!!」
抱いてる肩がわかりやすく揺れる。
その肩から手を離して、次は腰を抱き寄せて歩き出すと。
「ち、近い……」
暗がりでも、俯いてても。 赤くなってんのがわかって。
……それやめろよな、こっちまでつられそうになんだろが。
「なんか問題あんのかよ」
「な、ないような気がしますけど、さすがというか、あのもうなんて言うか」
「ん?」
立ち止まって、覗き込むと目をそらされる。
(おいおい、こいつ、ずっと男いたわけだろ?)
こんな照れんのか?
いちいち可愛い態度計算してんのか。 してねぇなら、マジで勝てる気しねぇ。