大嫌いの裏側で恋をする
***
「か、片付いてないですよ文句言わないでくださいよ」と、言われながら入った部屋。
ベッド周辺に何着か服が散乱してるのを、隠すようにしゃがんでかき集めてる。
その背中を眺めながら腕を伸ばし、引き寄せた。
「ぎゃ! ま、待って片付け、ってゆうかお腹持たないでくださいよ!」
「……なんで」
「帰り油断して食べ過ぎちゃったんです!」
「油断?」
聞き返すと、黙り込んだ。
「ああ、今日はやらせるつもりなかったのにって?」
「な、生々しいこと言わないでくださ……っ、ん!?」
声を飲み込むようにキスをする。
小さく離して、息を吸い込もうとする口をこじ開けるように角度を変えて、もう一度。
息苦しそうな声が、だんだんと熱を帯びたものに変わっていく。
しとやかな肌に全てを刻みつけたくなる衝動が、熱と絡まって。
余裕のない抱き方をしてること、頭の端では冷静に理解してるのにもちろん止まれるわけもない。
「もう無理」って何度も逃げようとする腰を掴んでは悲鳴のような声を聞いた。
ああ、俺は惚れたらこんな抱き方すんのかって。 知って。
重なり合う肌に刻み付けるように跡をつけながら、俺は口元を緩めた。
(可哀想になぁ)
これじゃ体力有り余ってる童貞に抱かれてんのと大差ねぇだろ。
なあ、どうすんだよ。 お前に会ってから俺、初めて知る自分が増えてくばかりだ。 余裕なんて、消えてくばっかりだ。
(まあ、頑張ってくれよ)
ここまで惚れさせたのは、お前なんだから。
仕方ねぇよな。
――夜は、始まったばかりだ。