大嫌いの裏側で恋をする


「何言ってんだよ、んなもんどうでもいいわ」
「よくないですよ、特訓します」
「まあ、そりゃ好きにすればいいけど今までどうしてたんだとは思うな」

うーん、と思い返して。

「買って食べるか、休みの日は悠介が」
「あ?」
「あ」

またやってしまった!
私は思わず口に手を当てる。
なんで? 私は何で今好きな人の前で別れた男の名前をポロっと出してしまうんだ? バカなのかな?

「なんだよ」
「いや、その、違うんです別に今も好きとかそんなんじゃ」
「当たり前だろ、好きでたまるかよ。 で、その男がなんだって?」

ベッドにもたれかかって肘をつき、私を睨む高瀬さんの低い声が聞いてくる。

「……え、いやぁ、疲れて寝過ごしたら、ご飯……つ、作ってくれてたりは、ありました」
「ふーーーん、あ、そう」

聞いといて、黙ってしまった。
でも当たり前だ。

「ご、ごめんなさい。 私なら絶対嫌だと思うのに」
「なにが」
「高瀬さんが元カノの話とか出してきたら、すごくヤキモチ妬くと思うのに」

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