大嫌いの裏側で恋をする
振り返ると、ニコニコと笑う奥田さんが、ポンっと高瀬さんの肩に手を置く。
「たーかせ、おはよう。 ねえ、お前彼女できたの?」
「は?」
「女の子たちが指名手配犯探す勢いでお前の彼女探してるけど、誰だろうねえ? 隣で赤い顔してる誰かさんの可愛い可愛い石川さんとかじゃないよねえ?」
「妙な言い方してんじゃねーぞ」
奥田さんがニコニコ、ひたすらニコニコと私を見る。
そして耳元に唇を寄せて。
「おはよう、高瀬の可愛い石川さん」
と、小声で囁いた。
「お、おおお、奥田さん! とりあえずそれは一度ご内密に……!」
「え? そうなの? つまらないな」
全然つまらなくなさそうな顔で言う、その奥田さんの顔が高瀬さんの手で遮られた。
「お前早く出ろよ、暇じゃねーだろ」
「おっと、お前心狭いね。 嫌われるよ」
「なんの話だよ、早く行け邪魔だ」
「はいはい。 あ、石川さん」
私と高瀬さんのデスクの間にいた奥田さんが恐らく自分のデスクへ歩き出そうとした時、彼はこちらを振り返って笑った。
「今日ね俺、石川さんたちが帰る頃には戻ってくるから。 夜、どこかで食べて帰らない?」
「は??」