大嫌いの裏側で恋をする



***

「あああ、ヤバい、忙しかった……」

入力を終えた注文書をまとめながらイスの背もたれに体重をかけ脱力する。
壁に掛かってる時計を見ると、お昼の12時を少し過ぎていた。
まわりを見渡せば、みんなゾロゾロと立ち上がり休憩に向かってる姿が多く目につく。

私も後に続くように腕を伸ばしてから立ち上がり、更衣室にカバンを取りに行こうとした時だ。

「ひっどい顔~」
「は?」

声の方を振り向くと、間宮香織の姿があった。

「……お疲れ様」
「ご飯行くの~?」
「お弁当ないから買いに行く」
「あたしもないから~、ランチ行く?」

突然の誘いに、私は「え?」と。 思わず驚きの声をあげた。
いや、私も話したいことあったし有難いんだけど。 多分めちゃくちゃ嫌われてるはずなのにどうしたんだ、この子。

「……別にいいけど、なんで?」

ちょっとビクついて聞いてみると笑顔の間宮香織が一転、般若と化した。

「なんでって? 顔貸せって言ってんだよ、わかんだろ??」
「いやいやいや、いきなり素出し過ぎでしょ! 怖いから!!!」
「あんたなんかに今更可愛い顔して何の得があんだよ、ほら早く!」
「えーー、マジで? だるい」

間宮香織が、くるっと背を向けて歩き出す。

「ちょ、ちょっと待って、財布取ってくるから!」

そう言ったら、早くしろよって振り返ってきた美人なお顔。
いや、それにしても自己中だな? 間宮香織。

< 165 / 332 >

この作品をシェア

pagetop