大嫌いの裏側で恋をする



***


「そういや、あの人はいないの~?」

会社のビルの隣にある小さなカフェで、間宮香織と向き合って座ってると唐突に聞かれた。

「あの人?」
「ほら、あたしあんまり会わないけど~俊平くんの同期だとかの美人な女」
「吉川さん?」
「あーー、それそれ、その女」

くるくると毛先を弄びながら、間宮香織はダルそうな声をあげる。

「今は本社に呼ばれて、よく抜けてるよ。 もうすぐ研修やらも終わるって聞いてるけど」
「ふーん。 そっちなら、あたしもまだ納得だったんだけど~」
「何が?」
「俊平くんの女だよ! 女! 何すっとぼけてんの!? あんただって知ってんだからね!?」

足を組んで、腕を組んで、ふんぞり返った間宮香織は私を睨む。

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