大嫌いの裏側で恋をする

「いや、まあいつも様子聞いてて石川ちゃんのが落ち着いてきてるってか、冷めてんのかなとか思ってたから」

「……え、そうだったんですか」

集まっていた視線がバラつき始めた頃、倒れたイスを元に戻した私に、ありがとう。とジェスチャーしながら吉川さんが座る。

「そうだよ、会えるのも特に楽しみにしてる感じでもなかったし」

「……やっぱ、そうだったのかなぁ」

コンビニで買ってきた素麺、その最後をズズッと吸い込み笑った。

確かに、そうだったかもしれない。

連絡が減っても不安になるどころか、こんなもんかって思ったくらいだった。

別れたくないのではなく、環境が変わる事が、ただ面倒だったのかもしれない。

思いやりや愛情、そういったものが足りなかったのかと喪失感に潰されそうになったのは一瞬で。

そもそも、私1人がそれを悔やんでも仕方がない。恋愛って1人で進めるものじゃないから。

そうやって、落ち着いて考える事ができたのは。 きっと――

「石川ちゃんにも、他に好きな男いた?」

「ぶっ!」

口に含んだばかりだったペットボトルの緑茶を吹いた。

タオルを鞄から取り出し急いで拭っていると隣の吉川さんは楽しそうな笑い声をあげた。

「いるんだ?」

「ま、まさか! まだ別れたばっかりで」

「え? でもそのわりには、もう吹っ切れてる感じだよね?」

「そ、それは、既に色々吐き出せたので」
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