大嫌いの裏側で恋をする
車内にひんやりとした空気が紛れ込む。
助手席側のドアが彼の手によって開けられたんだ。
「行っていいよ。高瀬くん今ねえ、出先から会社に戻ってるとこだって」
スマホの画面を私に見せて、ニコニコというか、ニマニマしてる。
「え?なんで?って」
もしかして。
さっきから、スマホいじってたの、高瀬さんだった?
目で訴えても、安定の笑顔しか返ってこない。
この人の言葉と行動、どこまでが本気で、どこからが試してて、どこからが。
嘘だったの。ほんとだったの。
「――っ、秋田さん!私、誘われてのこのこアホみたいについてきた女ですよ。それ優しすぎません?」
言いながら声が少し震える。
視界がじわりと、歪んでしまった。
あー、俺泣いてる女好きだからやめて。と、いつもの明るい軽口が聞こえてくる。