大嫌いの裏側で恋をする


「凄く嬉しかったんです、会社で顔を上げたくないくらい惨めな気持ちになって、なのに秋田さん優しくて、いつもみたいに軽口叩いてくれて」

カバンを持つ手に力を込める。秋田さんは、なんにも言わない。
いつも人の話割って入って、ペース乱す人なくせに。
こんな時には、ゆっくりと人の話を聞くんだ。

「でも、私頑固だから高瀬さんを好きな気持ちが捨てられない」
「別に高瀬くんとつきあってたままでも考えてくれてよかったよ?」
「で、できません!まさか、そんな」

そんな、ずるい気持ちのままで。

「秋田さんと一緒にいられる器用さがないです」

「だから、ごめんなさい」と、勢いよく下げた頭を優しく撫でられる。
高瀬さんのとは違う、力加減で。

「うん、わかった」

静かに答える秋田さんの声を聞いて、私は乱れた呼吸を整えたくて、小さく息を吐いた。

頭を撫でる手のひらの暖かさが、チクチクと胸を刺激してる。

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