大嫌いの裏側で恋をする
と、背後からいきなり会話に参加してきたのは言うまでもない。我らがお母様。
レジ袋を両手いっぱいに抱えてズカズカと乗り込んでくる。
「また勝手に……」
「再来週ここと、あともう一個ね試食会あったから申し込んどきなさいね」
「いや、再来週とか末締めあるし週末死んでると思うけど」
「何言ってんの、あんたヤル気あるの? ぺぇ君にメールしたら、ああ行ってきますよ、とか乗り気だったのに!」
「もう、ぺぇ君とかやめてよ。高瀬さんのイメージじゃないし」
「何よ、俊平くんなんだから! ぺぇ君でいいじゃないの」
半年ほど前、初めて我が家に挨拶に来てくれた高瀬さんを。
母は0.5秒くらいで気に入って、それはもう。
ガッチリと握手を交わし。
『明日にでもどうぞ貰ってやって』なんて、叫ぶから隣でお父さんはギョッとした顔を見せてた。
聞きつけて、見物に来てた美咲を見ても顔色ひとつ変えず『妹さん?よろしくね』と、軽く笑顔を見せた。
すぐに高瀬さんが溶け込んでくれたというか。
意地を張って、1人で浮いてる気になってた私を、また家族の真ん中に戻してくれたというか。
まあ、そんなふうに。
高瀬さんはゆっくりと確実に、私を愛して、私に自信を与えてくれて。
なんて思い耽ってると。