大嫌いの裏側で恋をする
番外編
枕元で振動がした。
(チッ、アラームかよ、うぜぇ)
布団の中から手を出して、手探りで見つけたスマホの画面をボーッと眺める。
画面の文字を、脳が認識する。
その途端に眠気が飛んだ。
(…………は?)
手にしたのは、俺のものではなく。
付き合っている彼女のスマホだったようで。
画面には〝悠介〟と表示されている。
俺は、自分が女々しい野郎だったなんていまだに認めたくはないが。
こんなことをジメジメと覚えてる時点で否定ができないことは、最近自覚してきている。
隣で眠る呑気な寝顔を見下ろしながら起き上がって、スマホを睨み付けてれば。
そのうちに『不在着信』の文字が浮かび、やがて画面は暗くなった。
(おいコラ、別れた男が今更何の用だってんだ)
腹が立ってしょーがねぇ。
「ったく、朝っぱらから勘弁しろっての」
隣の呑気な寝顔が、崩れないよう小さく愚痴る。
そうして苛立ちを誤魔化すように立ち上がり、ベッド横のローテーブルに置いてるタバコとライターを手に取った。
――惚れた女の昔の男ってのは、厄介なもんだな。
自分の胸の中の苛立ちが思いのほか激しく。
やれやれと髪をかきあげながらキッチンの換気扇下まで歩き、タバコに火をつけた。
深く吸い込んで、思いっきり吐き出す。
タバコはもちろんうまいけど、気分はさっぱり上がらない。