大嫌いの裏側で恋をする
何で私のせい! と、ついに本格的に起こり出した石川が立ち上がった。
「どこ行くんだよ」
「コンビニでも行きます、ちょっと甘いものでも食べよっかなー! イライラうつされちゃった」
立ち上がった石川の腹の辺りを腕で囲い、引き寄せる。
「ちょ、今度は何ですか」
驚いたような、怒ったような声。
「高瀬さん!」
明らかな拒否。
そんな声で名前を呼ばれても――俺は余裕なく、というよりも目を逸らしたくて、が正しいんだろう。
まあ、そんな感じで当たり前のように無視してシャツの隙間から手を入れ、素肌をさぐる。
ウエストの曲線を撫でるようにして、指先を滑らせるとピクリと背筋に力が入る。
そうやって、俺が与える刺激に反応を見せる石川の――下着を身につけてはいない、無防備な膨らみに触れようとした。
が、しかしその感触にたどり着くよりも前だ。
バチン!と痛快な音が部屋に響いた。
いや、響き渡った、ように俺の耳には聞こえた。
俺の手を石川が叩いたからだ。
まあ、わかっちゃいたけど、結構マジで痛い。
「高瀬さんが無言でそーゆーこと始める時は、なんかあるんですよね。 私何かしました?」
少し不安そうな色が混ざった声がして俺は、ついに観念する。
「お前寝てる間に電話鳴ってたけど」
「え? マジですか、誰だろ」
枕元のスマホを見つけて触れた。
石川がロック画面を解除するよりも前に声にして伝える。
「〝悠介〟だってよ、知ってんだろ、もちろん」
石川の表情が固まった。
ついでに動きも止まる。
俺は咄嗟に言うんじゃなかった、なんて、思うが既に遅い。
別に今更こいつが戻っちまうとか思ってるわけじゃないし、
じゃあ何かって?
妬いてるだけに、決まってんだろ。
悔しいけど……こいつの、アレやコレやを知ってる男がチラチラしてたら気になって仕方ない。