大嫌いの裏側で恋をする
(いつだったか、前の男の話を隠すなとか言ったけど、なあ)
ほんの少し過去の自分へと『どんだけ必死だったんだよお前』と哀しきエールを送りたくなる。
と、浸り込んでいる俺に上擦った声が聞こえた。
「え? ま、待って。 別れてから、いつも連絡取り合ってるとかじゃないですよ」
「あ? んなもん当たり前だろが」
「た、ただこの前からちょっと、その、何回か続いてきてて」
こいつマジで隠したり誤魔化したりが下手だよな。
丸わかりなんだよ。
焦りやがって。
焦ることがあんのかって、余計ムカつくだろが。
「何の用があって? 聞いてねぇけど」
「す、すみません、言うほどでもないかなとか」
「は?」
凄まないでくださいよ! と、石川が反撃する。
「いやいや、ウザくないです? わざわざ元カレから最近連絡くるんですよ〜、どうしよ〜とか」
「うざいのか?」
「や、モテちゃう私アピール的な、こう……ヤキモチ妬いてほしくて、あざとい感じ?」
「…………はは、なんだそりゃ」
(アピールされずとも妬いてるっつーの)