大嫌いの裏側で恋をする


「つーか、お前"高瀬さん"って何だよ、前の男は馴れ馴れしく呼んどいて」

「そん……な! んっ、高瀬さんだって」

服を弄って指を這わせれば乱れだす息に。喉を鳴らしそうになる。

「美波」

暑くなって、シャツを脱ぎながら呼んだ。
見下ろすと真っ赤になって俺を凝視する顔が見える。

「なんだよ、俺はいつも呼んでんだろ。 こーゆう時は、お前名前で呼ぶと反応いいだろが」

俺がからかい混じりの声で言うと、パクパクと口を開けて声にならない声で、多分抗議してる。

(ほんっと、どうなってんだこいつ、毎回毎回なんでこんな可愛いんだ。意味わかんねぇって)

さかりすぎだろってくらい何度抱いたって。石川は恥ずかしそうにいつも目を泳がせる。

照れてんのか、ぎこちなく固い身体。
触れて、愛撫して、ほぐして。「もう、やだ」と顔を背けて涙目になったら。
押さえつけて、こいつが1番乱れる弱いところを執拗に狙う。そうして強制的に刺激を与え続けると。

だんだんと、明確な単語がなくなって。ただ喘ぎながら俺の名前を呼び始める。
全身から力が抜けて。
あたえる刺激全てを、トロンとした顔で受け止め始める。

そうなると、つられてこっちも堪えきれなくなるから。

こうやって、もう何度目かわからない、つまらないことで妬いて尋問でもしてやろうかと。
そうして頭に血が上って始まるセックスは、すぐにその目的を忘れて快感にのめり込んでしまうオチだ。

結局は今回も。
最中に「会わないですから」なんて、荒い呼吸の中無理やり言わせて、納得したつもりになるしかなかった。
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