大嫌いの裏側で恋をする
「も、もうすぐ休憩に行こうと思ってたとこです! 今日は吉川さんがいないのでゆっくりしてて!」
「……ふーん」
今はちょうどお昼の12時を少し過ぎたところ。
高瀬さんも休憩がてら戻ってきたんだろうか。
しかし、それにしても。
エアコンが効いて涼しいフロア内と違って、外は暑かったんだろう。
ネクタイを緩めて、パタパタと襟元を扇ぐ仕草。
汗が室内のライトに照らされてるみたいに。
肌が、光って。
(昼間から何なの、超セクシーに見える……)
恋心に何かが美化されているんだろうか。
いかがわしさ満点の目で直視するに耐えれなくなってきた私は。
首を勢いよく前に戻し視線をパソコンに向け直した。
そして、そのままの姿勢で会話をする私の真横にまで高瀬さんはやってきて。
目線のところまで身体を折られ、視線を捉えられる。
「……お前なんか変だな? この前も言ったよな俺。 余計なことばっか考えてんじゃねーぞ」
ゆっくりと目の前で動いた高瀬さんの手が、私の前髪をかき分けて、額に触れた。
あの夜と、同じように。
「ーーっ!?」
カッと身体が熱を持ち、無意識に私は大きく仰け反ってしまう。
イスがガタっと音を立てた、それが。
やけに響いてしまう。
「……っと、悪ぃ」
(どうしよう……)
まるで、避けるみたいに距離を取ってしまった。