大嫌いの裏側で恋をする

全部を黙ってるのも、やっぱり何だかしんどくて。

「よ、吉川さんは高瀬さんのこと、どう思ってるんですか?」

ちょっと声を小さくして聞いてみる。

「え? 同期?」

「……ですよね」

「え? なに、どうしたの?」

こんな聞き方したら、そりゃ食いつくよ。

聞いてしまった私が悪い。

「ちょっと前から、吉川さんと高瀬さんが付き合ってるって噂が」

「ぶっっっ!!!!」

あ、ヤバい。

吉川さんが唐揚げを喉に詰まらせてしまったらしく。

ペットボトルの緑茶を勢いよく流し込んでる。

「嘘でしょ? え!? やめてよ、何がどうなってそうなってんの!?」

「ちょ、ちょっと、ま、待って落ちつてください」

私の肩を激しく揺さぶってくる。

とても力強い。

「高瀬さんと吉川さんがアンジュで何やら密着して話し込んでたとか」

「……はぁ?」

眉間にシワを寄せまくって吉川さんが首を捻る。

「ちょうど、ほら、吉川さんがお休みする前の……」

私が迷惑かけちゃった頃の。

それを続けて言えなくて、ちょっと情けなくなる。

「あーー、あの時のか、あれね!!」

どうやら心当たりを思い出したのか、吉川さんは頷きながら言う。

「全然違う、確かに2人で話してはいたけどさ~」

「好きだとか何とか言い合ってたって」

「え? いや、まぁ言ってはいたかもしれないけど、直接的なことじゃないと言うか、私はあいつ全くタイプじゃないし」

と、言いながら視線を彷徨わせる。
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