大嫌いの裏側で恋をする
「そ、そうですか、なーんだ! 2人が付き合ってるのかと思って、ちょっと気にし過ぎちゃいました」
「え!? なんか様子おかしかったのそのせい!? ないから、マジでないからね!?」
私これでも可愛い系の男の子が好きだからさ!
って、ガッツポーズで力説する吉川さんに、私は何やら必至に相槌で答えながら。
思ってた。
吉川さんは、嘘をつけない人。
高瀬さんに興味がないと言うのは、本当なんだろう。
けれど、何かを隠してる。
嘘をつけない人だから、目が泳いでるのがわかったもん。
(って、なると)
高瀬さんが吉川さんにフラれた?
そういうの広めたら高瀬そんに悪いなって、黙ってる?
もしくは、今もまだ片想い中?
だって、好きだってセリフを双方出してて。
吉川さんは高瀬さんに興味がないと言い切ってる。
(そっか、そういう感じなのか……)
胸が、何かに押さえつけられてるみたいに苦しい。
だって、なんというか。
付き合ってるとかよりも、あの高瀬さんが密かに片想い中かもしれないだなんて。
そっちの方が、私にとっては。
結構なダメージだったりする。
なんて話してるうちに、吉川さんが話を変えた。
「そろそろ歯磨きいく?」
「わ、ほんとだ。 もう45分」
会議室のドアの上にかけられてる時計は、
あと15分ほどでお昼の1時になってしまう。
イコール、休憩が終わっちゃう。
慌ててテーブルの上を片付けて女子トイレへ向かおうって、会議室を出てフロアを小走りで移動していると。
「あ、いたいた、石川さん!」
背後から、爽やかな優しい声に呼ばれ振り返る。