大嫌いの裏側で恋をする
「あれ? やっぱ奥田さんだ」
「あ、ほんとだー。 お疲れ、奥田くん」
高瀬さんと吉川さんの同期で、
私の先輩である奥田さんが手を振りながらこちらに向かってくる。
担当顧客が遠方に多いから、なかなか会社で顔を合わせることって少ない奥田さん。
揺れるサラサラ柔らかそうな色素薄い髪の毛が美しくて、羨ましい。
なんて思って見つめてたら、その後ろから高瀬さんまで歩いてくる。
「石川さん何か久しぶりだね?」
「はい、奥田さんいっつも事務所にいないから」
にっこり笑う瞳はいつも細められ、穏やかな空気を出してるから。
社内では高瀬さん派と奥田さん派!
とか、なんとかで女子社員が騒いでる。
同じハイスペック同士気が合うんだろうか?
類は友を呼ぶ、とか言うもんね。
考えながら奥田さんを見上げると、
やっぱり穏やかに笑ってる。
(イケメンが笑うとマイナスイオンでも出るのかな)
ちょっと癒されちゃってる私に、奥田さんが言った。
「この間やぐら行ってきたんだって?」
「やぐら?」
「うん、大将のとこ。 俺ともまた行こうね」
ああ、もしかしてこの間……
悠介と別れた時に高瀬さんが連れて行ってくれた居酒屋のことだろうか。
曖昧に頷いていると、高瀬さんの声が割って入る。