大嫌いの裏側で恋をする
「は、はあ!? な、なん、なんですか!!」
「あ? なにすっとぼけてんだお前、男とホテル入って何するか知らねえのか?」
「いやもちろん知ってますが私ホテルに入る気なかったですけど!!!」
ちょっと待って。
なんか、私空気に飲まれかけてたけど。
待って。
そうだ。
手を出してもらえなくて、残念だったと思った。
さっき、確かに思った。
こんな始まりもあるかもしれない。
『何か』あれば、キッカケになるかもしれない。
吉川さんに追いつけなくたって。
高瀬さんの横を胸張って歩ける女にならなくたって。
でも、
だけど。
それじゃ、ダメなんでしょ???
「……っ、い、嫌です、ダメです!! たか、高瀬さんは、ダメなんです!!!」
ほぼ無意識に、飛び出た叫び。
それを受け無言の高瀬さん。
私の手首を掴む手の。
その指を、ピクリと動かしたのを最後。
停止したように思えた。
……直後だ。
声がした。
私を見下ろしながら、あと少しで唇が触れ合う距離で。
高瀬さんは言う。