大嫌いの裏側で恋をする

「お前が嫌でも、嫌じゃなくても」
「……へ?」
「ぐーすか寝てようが、起きてようが」
「えっと」

しかし、触れ合うことはなく。
押さえつけられていた圧迫感が消えていく。
高瀬さんが、離れていってしまった。

「ヤれる時は、基本加減しねぇぞ、男は」

情けなく横たわる私に背を向け立ち上がった高瀬さんが抑揚ない声で言って、更に続ける。

「お前どうせ、男切れたことなかったろ」
「いやいや、言い方……」

確かに悠介とは短くはなかったし、その前の彼氏との間隔もそこまで空いてないかもしれない。
しかし、何故だろう。
高瀬さんに言われると物凄く『アンタにだけは言われたかないよ』って気持ちになるの、何だろう。

なんて、考えながら起き上がる。
ボサボサになってるであろう髪を手ぐしで整えながら。
あと、微妙な恥ずかしさを隠す為に。

「それがストッパーだった男からすりゃ、今だろが、エンジンかけるの」
「はい?」
「秋田さんなんか、あからさまにな」
「……いや、秋田さんはいつもあんな感じで」

呆れたような、苛立ったような。
声が私の返しに被さってくる。

「アホか、それ何回言ってんだ、お前。電話で挨拶程度のナンパと、今日が一緒か?」

確かに、さっき似たようなこと言ったかもしれないですけど。
アホですか。
バカに、アホに、気持ち悪いに。
高瀬さん、よくそんなんでモテますね。
片想いしてる、私が言うのもなんですが。

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