大嫌いの裏側で恋をする
「……そんなの、知りませんけど」
さすがに、今の立場的に怒らないから。
苛立つのを抑えて、私は返す。
「ああ、そうかよ、じゃあ知っとけ。 俺の知る限り秋田さんはこれまでのどの事務の女にも軽口叩いてきたけどな」
しかし、私の我慢なんて御構い無しに。
振り返り、また私の前で不機嫌な顔を見せた。
今日は、こんな顔ばっかり。
……私が、悪いんだけど。
「その女のミスを、蒸し返したことなんて一度だってなかった」
わかるか? って、小首傾げて腕を組む。
……顔、怖いんですけど。
私は、目を泳がせながら答えた。
「いや、別にあれくらいで狙われてるとか私自意識過剰になるかと思いますけど」
「……ったく、可愛くない女だな」
ズン、と高瀬さんの言葉が胸の中に重く広がる。
「別に、高瀬さんに可愛いと思ってもらわなくてもいいんで」
「ああ、だろうな。〝高瀬さんは〟ダメなんだろ? 安心しろよ、俺もお前にそんな気起きねぇわ」
さっきの、私の咄嗟の叫びを指してるのだろうか。
確かに、無意識に出た言葉だし、失礼だったのかもしれない。
でも、突き放すような言葉に。
自分のことは棚に上げて。
悲しい、悔しい、切ない、色んな想いが溢れて私の全身を掻き乱そうとしてくる。